
「あ
の素晴らしい昔の日本は、日本人はどこにいった」と最初からイデオロギッシュに決めつけた書ではない。文明の衝突のなかで外国の人はどう感じたのか。だか
らこそ浮き彫りにされる日本と日本人について、渡辺さんは丹念さと謙虚さ、そして冷静さをもって淡々と述べている。それゆえに深さと迫力を感じた。
「幕 末に異邦人たちが目撃した徳川後期文明は、ひとつの完成の域に達した文明だった。それは成員の親和と幸福感、あたえられた生を無欲に楽しむ気楽さと諦念、 自然環境と日月の運行を年中行事として生活化する仕組みにおいて、異邦人を讃嘆へと誘わずにはいない文明であった。しかしそれは滅びなければならぬ文明で あった」
すでに現世の物質的目的、実利主義的産業社会に突入していた欧米人が、近代以前の、しかも完成された文明をもつ日本をどう見たか。「陽気 な人びと」「簡素とゆたかさ」「親和と礼節」「雑多と充溢」「勤勉と忍耐と安易な生活」「専制主義と身分と自由」「混浴・行水、裸体と性」「子どもの楽 園」「女と家」「風景とコスモス(私の地元、王子の風景が出てくる)」「生類とコスモス」「心の垣根(休息と安寧と平和)」など、すさまじいほどの文献か ら、日本と日本人を根底から問いかけている。ただし、イデオロギーでもないし、復古でもない。渡辺さん自ら、関心は自分の「祖国」を誇ることにはないと 言っているが、だからこそ日本と日本人が照らし出されている。
「幕 末に異邦人たちが目撃した徳川後期文明は、ひとつの完成の域に達した文明だった。それは成員の親和と幸福感、あたえられた生を無欲に楽しむ気楽さと諦念、 自然環境と日月の運行を年中行事として生活化する仕組みにおいて、異邦人を讃嘆へと誘わずにはいない文明であった。しかしそれは滅びなければならぬ文明で あった」
すでに現世の物質的目的、実利主義的産業社会に突入していた欧米人が、近代以前の、しかも完成された文明をもつ日本をどう見たか。「陽気 な人びと」「簡素とゆたかさ」「親和と礼節」「雑多と充溢」「勤勉と忍耐と安易な生活」「専制主義と身分と自由」「混浴・行水、裸体と性」「子どもの楽 園」「女と家」「風景とコスモス(私の地元、王子の風景が出てくる)」「生類とコスモス」「心の垣根(休息と安寧と平和)」など、すさまじいほどの文献か ら、日本と日本人を根底から問いかけている。ただし、イデオロギーでもないし、復古でもない。渡辺さん自ら、関心は自分の「祖国」を誇ることにはないと 言っているが、だからこそ日本と日本人が照らし出されている。