「私はよく、理屈は大嫌いだと言って、笑われることがある。......あるいは、この件についての御意見を、と訊かれて、たいていは言葉につまる。意 見というものを、もったことがないのである」――。理屈を言い、意見をもっていると思われた池田さんは、たしかにそうだったろう。哲学とは全てをそぎ落と した境地から始まると思う。
東日本大震災は、生死の世界に人々を引き込んだ。「畏怖することを忘れた心を目覚ますように、異界の者たちは、折り
にふれわれわれを襲うのではなかろうか」「能率的に考えることが、合理的に考えることだと思い違いをしているように思われる。......物を考えると
は、物を掴んだら離さぬということだ」「言葉の意味、すなわちその内的実質というものについて、おそろしく鈍感になっている時代だと思う」「生きることは
考えること。......考えるとは、自分がまさにそれを生きているところの人為でもあり自然でもあるこの実在、この不可知の存在の何であるかを考えるこ
と以外ないのだから......」「現在という価値に生きることをせず、それを解釈することに我を忘れている評論家的心情」――。
小林秀雄と池田さんが一体となって如実知見、諸法実相の世界に迫っている。亡くなる3年前、2004年の著作。
小林秀雄と池田さんが一体となって如実知見、諸法実相の世界に迫っている。亡くなる3年前、2004年の著作。