かつて「暴走老人!待てない、我慢できない、止まらない」(藤原智美著)や「祖母力」(樋口恵子著)なども興味深く読んだが、曽野綾子さんは、年を重ねても自立した老人になっていない、年のとり方を知らない(......してくれないというくれない族)が 増えていることを問題とする。「自立と自律の力」「孤独と付き合い、人生を面白がる力」などが大切。老いの才覚=老いる力を持つことが重要だという。「い くつになっても話の合う人たちと食事をしたい」「あるか、ないか、わからないものは、あるほうに賭ける」「孤独と絶望こそ、人生の最後に充分味わうべき境 地なのだと思う時がある」、そして最後のブラジルの詩人の「浜辺の足跡」は印象的だ。
12年前の「中年以後」とあわせ読むと感銘深い。「『老いの才覚』が大変なベストセラーになってしまって......」とか、時代そのものを曽野さんは感じているのかもしれない。両書の微妙な変化もまた「老いの才覚」なのか。