井上亮氏が聞き、半藤一利氏が答える。
平易に語れる(書ける)ということは、わかっているがゆえ。わかるには、文献を読み込むだけでなく、現場の肉声を聞いて実感することが加わっている。
たとえば半藤さんは、文春に入社して、いきなり坂口安吾に泊り込みで会う。「本当に常識的な見方」「ごくごく常識的な合理的な推理をするということは歴史を学ぶためにいちばん大事」「八紘一宇・・・・・・そんな馬鹿な話があるか」――。
永井荷風との出会いのなかから、永井荷風が語られる。
漱石の小説は、日露戦争後のいい気になって大国主義に走る日本への「文明批評」だと、漱石の内側から語ってもいる。軍人にも会って話を聞く。語る人と黙する人がいるが、その沈黙も言葉だろう。
日露戦争後、勝利で堕落した日本人。満州事変、2・26事件、三国同盟の昭和の3つの失敗。そのなかでの昭和天皇や各界のリーダーの思考と行動。司馬遼太郎と松本清張の近代史観。
何を国家の機軸とするのか。流されるな。戦争や軍というものを知れ。大切なのはリアリズムと常識。半藤さんの「歴史は人間学」は深い。