震災後.jpgあの「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」をぐいぐい描いた福井晴敏さんが、3・11東日本大震災と原発事故をどう描くか。注目の作品。

私は5月1日に気仙沼に入ったが、なんと本書の親子もその5月1日に気仙沼に入る。そこで中学2年の息子はボランティア・シンドロームともいうべき衝撃を受け、「未来を返せ!」と絶叫するに至る。本書は現在の"闇"と未来の書。

主人公は44歳の野田圭介、その息子、そして野田の親の3世代の心の中に潜むそれぞれの"闇"――。各世代の"闇"でもある。

文明の進歩と当然の失速・限界・失敗――。世界は完全だったためしは一度もなかった。そのなかで自然と文明の折り合いをどうつけ、経済と安全をどう両立させるか――。人は"闇"に囚われるかもしれないし、自らを壊そうとしてしまいそうにもなる。

しかし、人間には過ちを正す力がある。解決の力がある。「哀しみを遠ざけよ」と与えられた時空・社会の限定性のなかで、それぞれの世代が前へ進む意志のバトンを渡してきた。そこに人間の意志のつくり出す未来がある。" 闇"に苦しみながらも人はまた歩みだす。それゆえに、「未来は常に青年の胸中にあり」との自覚を社会全体でもつことが大切となる。

今回の文明史における大地震と大原発事故を、どうとらえ、どう語るか。祖父、父、息子の3世代が「文明と未来」について語り、現在を歴史の上に静かに置く。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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