
「日本の農業と農政に今求められているのは、日本農業の強さと弱さを直視し、10年後の農業と農村のかたちを現実味のあるビジョンとして描き出すことだ」「少数のずば抜けた成功例を単純に一般化してバラ色の農業を描き出すことはしない」「そのビジョンのないことが、迷走・逆走して不安を増幅している」と生源寺さんはいう。
規模拡大がいわれるが、規模拡大のコストダウン効果は10ヘクタール前後で消失する。経済的には20世紀後半、1人当たりGDPは 8倍となったが、土地利用型農業の場合(コメ)、他産業並みの所得は難しく、面積の拡大と技術革新は不可欠となる。そこで支援が必要だが、迷走続きだ。しかも、まとまった土地の確保が難しいという課題に直面している。
奇手・妙手があるわけではないが、問題点はわかっているゆえに、慌てる必要はない。現状を直視し、土地の集約をし、農業自体の競争力をレベルアップし、担い手を育て、規模とともに付加価値を高めてアジアにも照準をあてる。農業生産者が価格形成にも参加する。国際社会のなかで価格競争力の足らざる部分を補う政策を講ずる(関税による保護政策から政府の直接支払いによって農業を支える=国民の選択だが)――食料の安全保障の視点からも現状程度の農業の維持は絶対に必要であることを主張している。