宮澤退陣で55年体制に幕が引かれた後、政治は明らかに変調をきたしている。とくに昨年来の東日本大震災、菅政権、野田政権――。政権を担当する首相、まして政権党、政治家全体から国を運営し、国民の生活を守るプロあるいはプロ集団の臭いが次第に薄れてきている。ノンプロ劇団の芝居のように映る、と岩見さんはいう。国を背負う「決死の覚悟」が欠けている。かつて政界にいた憂国の士がいない。器用だが、腰の座っていない政治家が増えている。言葉の軽さは目を覆うばかりだ。
「政治家はポピュリズムに流されず、有権者は政治家の選別眼をしっかり身につけよう」――。この危機に対してはまず政治からだ。だからこそ政治家を厳選する気風と習慣を早く身につけようという。
岩見さんの切れ味はカミソリというよりもズシッとしたナタのようだ。それでいて岩見さんの言葉には、人物を包み込む温かさを私はいつも感じる。「最近は毎週書く数本の私のコラムに批判の投稿が増えている」と書かれているが、ズバッというからだろうが、それにしても温かさが感じとれないゆえなのか。閉塞感漂うゆえなのか。「近聞遠見」「サンデー時評」――毎週読んでいる。