1890年から1945年まで、考えてみればわずか55年。人類は二度の大戦を行い、日本は日清、日露、太平洋戦争へ進んだ。膨大な近・現代史だが、田原さんの問題意識は、鮮明だ。「日本は侵略戦争をしたのか」「ほとんどの人が負けるとわかっていた戦争になぜ踏み込んだのか」――全てがそこに照準があるがゆえに、それと自らの人生を考察しているがゆえに、本書は他をそぎ落とした明解さが際立つ。
"対華21か条要求から侵略"と考えてきたが、本書では、日露戦争の同時期、朝鮮における日本の動きは先行していると思われる。当時の伊藤博文や、あの昭和の戦争で回避を考えていた人たちが多いのに、激論の最後は国家よりも組織益に傾く判断が常にあった。
状況のなかから考える"流れ思考"。世界の状況、情報から隔離された稚拙な判断。今、自らも歴史のなかにいることを省みる。