大都市近郊の新興住宅地を舞台にして、子どもたちと親、教師が悩みと傷をかかえつつ、ある瞬間、ふっきれる。ほのかな光を見出す。そうした日常的な、しかし各個人にとっては人生の全てをかけた重大、深刻な心を描いた5つの短編集。
人は本質的に善性をもち、生きたい、希望をもちたい。救いが欲しい。「私は悪い子なんだ」「ごめんなさい」という世界から脱して「きみはいい子」と、誰か一人でもいい、思ってくれる人がいれば乗り越えられる。そんなことを学校、子どもたちの繊細な心の襞にふれながら描いている。
昨今の陰湿で残忍な"いじめ"問題。皆、忙しくてイライラして、子どもの純で繊細な心に、時間をとって、ごく普通にふれあうことができなくなっている。人はそれぞれの事情と宿業をかかえて黙しながら生きている。