姜尚中さんが亡くなった息子と感じた西山直広君とのメールのやりとりから成る小説。直広君は心友・与次郎君の生と死に導かれ、東日本大震災における遺体の引き上げという過酷なボランティア「デス・セービング」に取り組む。ゲーテの「親和力」が基調音を奏でる。
親友の死、裏切り、良心の呵責、募る恋、さまざまな親和力、大地震、デス・セービング、PTSD......。不可思議な人間関係、人と人との出会いのなかにこうした親和力や分離力が働くのは、宇宙広しといえども人間だけだ。諸法は実相であり、諸法の実相を如実知見せよ。無常の中にも常住を見よ。常住壊空のなかにも永遠性を信じ真面目に生き抜け――そういっているようだ。
最後は姜尚中さんの息子さんの最後の言葉「生きとし生けるもの、末永く元気で」で締めくくられている。この言葉があまりにも重いために、姜尚中さんは、ピュアで普通の小説にしたのだと私は思った。