「靖国神社に祀られている英霊はもちろん、無差別絨毯爆撃で皆殺しにされた無辜の国民、広島・長崎の原爆によって殺戮された一般市民、爆撃を受けて亡くなった産業戦士の人々、勤労動員中に戦禍に遭った中学生など一般市民の戦争犠牲者も含め、先の大戦の全戦没者をお祀りし、慰霊・追悼することが千鳥ヶ淵戦没者墓苑の務めだと考えている。それが国民の総意となったときに初めて、悲惨な結末に終わった大東亜戦争の戦後処理が終わったといえるのではないだろうか」と堀内光雄国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会会長(元衆院議員)は結んでいる。
本書では、あの戦争が6カ月前に終わっていれば100万人以上の死者が助かった。「戦争終結の遅れ」「広島・長崎への原爆投下」「米軍の無差別都市爆撃」「条約違反のソ連参戦とシベリア抑留」――この4つが問題だ。しかもこれには国際法違反などがある。「靖国」と「千鳥ヶ淵」には、逮捕直前の東条英機自身の発言に始まり、合祀基準、慰霊祭、サンフランシスコ講和条約の直後の吉田内閣の「全日本無名戦没者合葬墓建設会」、それへの抵抗など、いずれも激しい論議があって現在に至っていることが示されている。歴史認識と日本人のアイデンティティを掘り下げる作業である。