東日本大震災の津波――。三陸の大津波は、決して未曾有の出来事ではない。「自然は過去の習慣に忠実である」(寺田寅彦)といっているが、わかっているのに「人は忘れる」。津波に「対抗する」のではなく「備える」「逃げる」ことが重要だ。「自然を征服する」のではなく、「いなす」「すかす」のが先人の知恵だ。
そして「原発」と「想定外」。「基準を守ればいい」「マニュアルを守っているからいい」のではない。「何も考えない」ではなく、日頃から訓練をして想定外のことにも咄嗟にきちんと対応できるようにすることだ。「コンプライアンスが法令遵守と訳されるが、そうではなく、社会の要求に柔軟に対応するというのが本来の意味だ」「日本の組織はマニュアル偏重主義に陥りがちだが、人は"見たくないものは見えない""聞きたくないことは聞こえない"ものだ」――。
「組織事故」「共同体事故」「多重防護の必要性」――「失敗」「事故」について、現場を歩いて何が大切かを示してくれている。