さようなら、オレンジ.JPG
まさに海外の小説のよう。アフリカの戦火によって親・兄弟を失って難民となりオーストラリアに逃げてきた主人公。それ自体が新しいが、そのきめ細かな心象の描写は卓越したものがある。「シャワーの中で彼女(サリマ)はよく泣いた」「右も左もわからない。頼りになる親戚もいない。友人の支えも望めない。そしてなにより、言葉が伝わらない」「必死の思いでここにともに逃れてきたというのに、夫はいともあっさり妻と子供を捨ててしまった」――。一方、その友人となる日本人女性・佐藤サユリ。大学の研究員の夫についてオーストラリアに渡ってきたが、最愛の娘を託児所で失い、哀しみと喪失感にさいなまれる。

娘のいない色彩のない世界、光の先に追いやられた憂鬱やその下に広がる陰影を見てしまう二人だが、滲み出るような慈愛の交流によって「生きて死ぬということがただならぬことだ」ということを感じるようになる。幸せとは○○を獲得するものではない。幸せとはそこにあるものだ。自分を受け入れること、そして走り出すことなのだ。働き体に覚え込ませ、自分で素直にその場から立ち上がるしかないのだ。そこに苦しさをため込んだゆえに涙して見た夢や希望、夕陽、オレンジ色は消え、新たな境地がスタートする――そんな世界を描く。祖国とは、母国とは、母国語とは、人間とは、生きることとは、幸福とは、そうしたことを語りかけている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。元国土交通大臣、元水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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