
「文藝春秋」の巻頭随筆の約3年分をまとめたものだが、驚くことがいくつもある。まず、立花隆さんの「同時代を撃つ」をいつも読んできた者として、本書は毎月の巻頭随筆でありながら時代、日時を超えているということだ。それに厳しい指摘というより「日本はそれほどお先真っ暗ではない」「日本はまだまだいける」というポジティブな話が続くこと。サイエンスの現在と未来が深く食い込むように語られること。今の話題が、太古の歴史から、宇宙から語られるということ。常に現場に行き、人に会っての思索が開示されること、等々だ。圧倒的な知識と智恵と、境地を感じる。情けないほどに政治経済などはもうとっくに置いてゆかれている。
「21世紀 文明の逆説」が副題だ。「PTG第二世代へ」「ひこばえ」「LNGの底力」「来るべき大革命(夢の光・X線自由電子レーザー)」「百億年に一秒しか狂わない四次元時計」「ベトナム(戦争)の真実」「大丸有(大手町、丸の内、有楽町)と巨神兵」「危険なメソッド(フロイト、ユング、ザビーナ)」「失われた密約(竹島密約)」「黒潮町長の執念」「ツングースカの謎」「有機合成新時代」「出雲大社詣」「麻酔とボーイング787」「アイヒマンは凡人だったか(ハンナ・アーレント)」「仏頭の来歴(大化の改新、蘇我入鹿、天智・天武・持統天皇)」「古代史のなかの埼玉(雄略天皇、鉄技術)」「クリミア戦争を覚えているか」・・・・・・。まさに「知の巨人」だが、淡々と、そして凄い。