
国土のグランドデザインの必要性は、その都度指摘され、「日本列島改造論」「田園都市構想」や全国総合開発計画(全総)などによって提起されてきた。しかしこの20年、未来を描くという作業が十分行われてこなかった。特にこの10数年、「急激な人口減少、少子化」「異次元の高齢化」「都市間競争の激化などグローバリゼーションの進展」「巨大災害の切迫、インフラの老朽化」「地球環境問題」「ICTなど技術革新の進展」という劇的な構造変化に直面。日本はデフレに沈み、未来を描くという意欲すら失っていたように思われる。
私は衆議院議員になってから、国土のグランドデザインの必要性を常に提唱してきたが、国土交通大臣に就任してその策定に着手。約1年半をかけて議論し、昨年7月4日に「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成~」を発表することができた。
そのキーワードは「コンパクト プラス ネットワーク」と「対流促進型国土」である。対流は温度差があってはじめて起こる。コンパクトシティを進める各都市、各地域が個性を発揮して、違いがあるから対流が起き、連携が始まる。私は、公共事業は長期的視野に立って行われなければならないと考えており、2050年という長期を見据えて国土づくりに取り組む柱がこの「国土のグランドデザイン2050」だ。
本書は、この作業に取り組んでいただいた大西隆氏、奥野信宏氏、小田切徳美氏、坂村健氏、寺島実郎氏、藤沢久美氏、野城智也氏、橋本哲実氏をはじめ、国交省の総力を挙げて作り上げ、結実したものである(上記各氏のコメントも本書に載っている)。分かりやすい図表も多く取り入れ、私と増田寛也氏との対談「全国の市町村よ、人口減少に『知恵』と『ネットワーク』で立ち向かえ」や、グランドデザイン2050の本文も掲載している。
時あたかも「地方創生」が重要テーマとなっている。国土づくり、地域づくり、まちづくりに取り組む多くの方々に是非とも読んでいただきたい。