
イスラーム国の衝撃――長い歴史、来歴、根本思想、アラブの春、イスラーム主義穏健派の台頭と失墜、組織、巧みなメディア戦略・・・・・・。その実態、実情を真正面から解読してくれる。
「『イスラーム国』の台頭は、グローバル・ジハードの思想と運動の発展と『アラブの春』によって生じた政治変動の帰結が結びついたところに生じた」「『アラブの春』は短期的にアラブ諸国と中東地域全体に不安定と混沌をもたらした」「『アラブの春』をきっかけにした中央政府の揺らぎは辺境地帯の統治の弛緩をもたらし、『統治されない空間』を各地に生み出すと共に、それぞれの辺境地帯の混乱が相互に影響しあい、新たな紛争を連鎖していく。そこにグローバル・ジハード運動が介在していくことで、いっそう混乱は深まっていく」・・・・・・。
中東の近現代史のなかで、「イスラーム国」の台頭という現象をどう位置づけるか。その急激な伸張の影響で中東秩序の溶解が加速している。構造変動の軋みがますます表面化する様相を呈していると、池内さんはいう。そして台頭の背景には、中東地域への米国の一極覇権構造の希薄化も指摘している。中東秩序の行方がどうなるか。そのために世界各国、中東域内の地域大国はどう動くか。重大局面にあることを示している。