人生は「縁」が見えるか否かで深さが決まる。不思議としかいいようのない出来事が現実にある。「運」「縁」「命」「天」「自然」「海」「時」「出会い」・・・・・・。
舞台は「光と色と音のるつぼで四六時中翻弄されて、心の堤から泥水が溢れ出ようとしている都会」を離れた「豊かな湧水に恵まれ、海に沈む夕日が、実った稲穂を照らす美しい光」の田園広がる富山。
富山の小さな駅に残された一台の自転車。15年前出張で「九州に行く」と言い残して富山で病死した自転車メーカーの社長である賀川直樹。絵本作家として活躍する「娘」の賀川真帆は、「絵本」を通じてできた意外な出会いをきっかけに、"縁の糸"をたどることになる。富山と京都、東京とそれぞれ誠実に生きている家族の運命が交錯する。
「縁の糸」はもつれることがある。「父」の秘密、それを平静のうちにおさめようとする関係の人々。互いが相手を思い、信じ、守り合う心が、誰からも愛される夏目佑樹(直樹と海歩子の息子)に流れ込む。北田茂生(シゲオちゃん)、平岩壮吉の存在がいい。