「人間国家」への改革.jpg「参加保障型の福祉社会をつくる」と副題にあるが、提起しているものは、もっと広く、より本質的だ。「人間の尊厳と魂の自立を可能にする政治・社会・経済体制はどう構築されうるか」を、根源から説き起こし、提起する。各項目に自分の考えを付加して読んだ。思考が刺激された。

原点にあるのは師・宇沢弘文氏の「資本主義と社会主義という二つの経済体制を越えて人間の尊厳と魂の自立を可能にする経済体制」すなわち「人間国家」である。しかし、現実には「脱工業化へ舵を切れなかった日本」であり、「大きな市場・小さな社会・大きな政府の福祉国家を、大きな市場・大きな社会・大きな政府の人間国家に鋳直すこと」が大切だという。

「新自由主義の経済政策は、所有欲求が存在しなければ機能しない。"市場拡大・政府縮小"戦略では、富を"飴"に、貧困を"鞭"にし、競争へと駆り立てなければ労働を強制させられないからだ」「大量生産・大量消費の工業社会に代わる知識社会という産業構造のもとでは・・・・・・知識集約産業が求められる。・・・・・・人間が機械に働きかける工業よりも、サービス産業という人間が人間に働きかける産業が主軸を占める」「社会的インフラストラクチュアを張り替える。あわせて社会的セーフティネットの張り替え、生活保障から参加保障へ。現金給付から現物給付へ」という。

また「財政を有効に機能させる増税が大切で、教育を充実させていくためであれば、国民は租税負担の上昇を受け入れる」「医療・福祉・教育などの対人社会サービスは、"人間国家"の参加保障を実現する重要な現物給付。"人間国家"の政治システムを活性化する"参加型"民主主義とは、その現物給付の供給に直接参加することを意味する」「人間の共同体では、人間と人間とが"生"を"共"にし、人間と自然とが"生"を"共"にする共生意識が機能している。・・・・・・"人間国家"はすべての社会の構成員の共同意思決定への参加を取り戻そうとする」などを示す。提示しているものは、きわめて根源的であるとともに未来を「人間国家が導く、懐かしい未来」としている。対話しながら読んだ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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