「対立の構図を超えて」と副題にあるが、被害者と加害者、自虐と独善の対立を超えて、過去をめぐる歴史認識をどうもつか。
人によって、国によって違う歴史認識を一致させることは難しい。しかし、背景を探り、事実を積み上げ、考え方を丁寧に示すことはきわめて重要だ。時代の背景、実証作業も重要だし、勇気もいる。きわめて率直に聞く江川さん、それに答える大沼先生は、より率直だ。その裏には実証研究の深さに加えて、慰安婦問題をはじめとして実際に解決に向けて働き続けてきた実践行動がある。その絶妙のバランスと強き芯が、心に響いた。
「東京裁判――国際社会の『裁き』と日本の受け止め方」「サンフランシスコ平和条約と日韓・日中の『正常化』――戦争と植民地支配の『後始末』」「戦争責任と戦後責任」「慰安婦問題と新たな状況――1990年代から21世紀」「21世紀世界と『歴史認識』」の5章より成る。難問を偏りなく如実知見する力、そして粘り強く一歩を踏み出していく努力が必要だと思った。