あん ドリアン助川.jpg「どら焼きのどら春」――この店は、線路沿いの道から1本路地を抜けた桜通りという名の商店街にあった。店を任せられている千太郎はバイトの求人を見てやってきた指の曲がった高齢の女性(76歳)・吉井徳江を雇う。そのつくる「あん」がとても旨く、店は繁盛しはじめる。しかし徳江の指に込められた閉じ込められた人生が少しずつ少しずつ語られていって・・・・・・。

「誰にも生まれてきた意味がある」「生きる意味がある」「私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた」「私がいなければ(観る人がいなければ)、この満月はなかった」「世のため人のために働いてみたかった」――。自ら背負った人生の苦しみから得た人生の深淵が語られる。「喜びは苦しみと背中合わせだった」ということも。そして「現実だけ見ていると死にたくなる。囲いを越えた心で、生きるしかない」ことも。

ラストは桜をモチーフにして、静けさと沈黙の時間が流れ、心に迫ってくる。しかもそうではないかと思いつつ読み進んだが、徳江が「もう一度あの桜が見たい」と言っていた故郷の桜は、私が生まれ育った愛知県新城市の桜淵公園の桜。私も時折り、その思いにかられる。なお、徳江はハンセン病だったが、このほど最高裁は、裁判を裁判所外の隔離施設などで行った特別法廷について、運用は違法で、患者への差別を助長するものとして謝罪した。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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