「2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来」と副題にあるが、驚愕というより現状分析を踏まえて未来を淡々と論じている。
マシュー・バロウズ氏は、アメリカのNICの元分析・報告部部長で、直近の2号である「グローバル・トレンド」(2025/2030)で主筆を担当。この「グローバル・トレンド」は4年に1度、新大統領に対し、アメリカが未来に向けて準備すべきことを報告しているものだ。
今、世界はG20の時代。新しい国家が台頭し、パワーの性質の変化やパワーの拡散が起きている。その拡散を起こしている最大の主体は、国家ではなくて個人。新たな中間層に加わり、新しいテクノロジーによってエンパワメントされた無数の個人がボトムアップ型のダイナミクスを生み出し、パワーの拡散を引き起こしている。新しい多様なアクターは、新たな国、NGO、多国籍企業、テクノロジーを身につけたスーパエンパワード・パーソンだ。
異常気象、気候変動、人口爆発、食料や水の不足、民族的・宗教的対立、人口移動、低成長、お粗末な統治、テクノロジー。そして覇権国の存在しない多極化する世界、中国やインドの動向、中東の不安定要因・・・・・・。難題があふれている。
序章「分裂する21世紀の世界」に始まり、「個人へのパワーシフト」「台頭する新興国と多極化する世界」「人類は神を越えるのか」「人口爆発と気候変動」「もし中国の成長が止まったら」「テクノロジーの進歩が人類の制御を越える」「第3次世界大戦を誘発するいくつかの不安要因」「さまようアメリカ」などに論及している。第3部は「核の未来」「生物兵器テロ」などが小説として書かれている。