「掛け値なしの面白さ 著者初の現代ミステリー」と帯にあるが、ミステリーというよりも蓄積された心の奥がにじみ出る4篇の小説。
尊敬する高名なグラフィック・デザイナーの叔父から、死後に日記が届く。その意味するものを探る「晩秋の陰画」。飛行機恐怖症の男が、人の余命日数が見えてしまう特殊能力をもつようになり、その結末を描く「秒読み」。アラン・ドロン、リノ・バンチュラの「冒険者たち」に魅せられた人たちを描く「冒険者たち」。そして音楽評論、オーディオ評論、音にかけた男たちの人生の終章「内なる響き」。
これまで抱いてきた山本一力さんの世界が一変し、フランスへ、アメリカへ、音へ、ハーレーへ、深層心理へと時空を乱反射する。