「黒澤明 全作品と全生涯(2010年 東京書籍)」など、黒澤明の実像を紹介してきた都築政昭さんが、その人間像と「黒澤映画」の真髄を語っている。改めて、その凄さに感心する。
私自身、「姿三四郎」に始まり、「素晴らしき日曜日」「羅生門」「生きる」「七人の侍」「隠し砦の三悪人」「悪い奴ほどよく眠る」「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」「赤ひげ」「影武者」「乱」など、生涯で30本作った映画のかなりを見てきたことに驚いた。「黒澤は『映画という美しくて素晴らしいもの』の奴隷なのである」「生きる勇気と元気を与える映画を!」「人間は仲良く善意をもって」「人間は自然の一部」「闘う――男たちの世界」「笑わせ、泣かせ、怒らせて」「人間の尊厳、そこにある確固とした人生肯定」「愛とヒューマニズムの体現」「トルストイとドストエフスキーとバルザック」「テーマが骨太で、話がおもしろくて、映像がダイナミックで、俳優が持ち味を出しきって」「イプセンのように最初に盤石な布石をする」「演技に助太刀はせず、自分で絞り出せ」「名うての完璧主義者」「悪い、いいの見極めがつかないでどうして監督がやれるか(ニセモノとホンモノの区別)」・・・・・・。
映画を芸術の高みに押しあげた黒澤明の人と作品が躍動的に語られる。