東京は世界の主要都市の中で、渋滞の少ない大都市と言われています。私は、この東京を世界でも例のない「渋滞のない大都市」にすることを目指しています。
現在でも、渋滞損失は移動時間の実に約4割を占めています。これは年間で約280万人分の労働力に相当し、渋滞による損失は年間12兆円に上るという試算もあります。
私は国土交通大臣在任中に、渋滞対策のための施策の幅を広げ、現場で強力に展開してきました。このところ目に見えて成果が現れてきています。
2015年3月に首都圏3環状の一つである中央環状線が全線開通したことにより、中央環状線内側の交通量が5%減少し、都心環状線の渋滞がなんと50%も解消しました。
板橋・熊野町JCT( 板橋区 及び 豊島区 )の渋滞対策も行いました。中央環状線の内回り滝野川入口( 北区 )から5号線上りへの合流部分は、2車線が1車線にせばめられ、渋滞発生ポイントとなっていました。そこで、1車線両側のゼブラゾーンを廃止し、合流部まで2車線としました。すると、合流部の渋滞は解消しました。
また、首都高速5号線中台料金所( 板橋区 )の改良も行いました。この中台料金所は、朝の時間帯は中台入口の下の一般道路まで渋滞が続いていましたが、PA専用になっていた第6レーンを解放することにより、渋滞の緩和を実現しました。
いずれの例も、わずかな投資で、劇的な改善が図られた例です。さらに、ビッグデータを駆使した渋滞発生メカニズム分析による、ピンポイント渋滞対策も導入が進んでいます。
中央道調布付近の上りは、朝夕の慢性的な渋滞が発生していました。この渋滞の原因を分析すると、調布ICからの合流や、三鷹バス停付近に向かう緩やかな上り坂による、車両の速度低下が原因であると判明しました。
そこで、2車線だったときより車線の幅を狭め、道路左側の路肩を新たに車線にすることで、3車線化を実施しました。その結果、平日の渋滞回数が4割減少し、渋滞時の通過時間も3割短縮しました。
渋滞が発生しているのは、そこに生産性向上の伸びしろがあるということです。渋滞対策を強力に進めていくことが、我が国経済の体質改善のカギを握っています。