ギリシャ美術から印象派に至るまでの西洋美術の変化には、西欧の歴史、政治・社会、文化、価値観の変遷が投影されている。とくに、信仰や権力者の意図もあって、一定のメッセージを伝える手段でもあっただけに、「読み解く」ことが重要でもある。これまで中野京子さんの一連の「読み解くシリーズ」や原田マハさんの幾つもの小説等を興味深く読んできただけに、本書は掛け足する俯瞰の良さをもつ。
「なぜ、古代の彫像は『裸』だったのか(男性美を追求したギリシャの価値観)」「ローマの大規模建築」「修道院の隆盛によるロマネスク」「巡礼ブーム・都市化とゴシック美術(神と光)」「ルネサンス」「15世紀の北方ルネサンス・ネーデルラント絵画」「16世紀ヴェネツィア絵画の自由と享楽」「カトリックvs.プロテスタントが生み出した新たな宗教美術・バロック絵画(ルーベンス、ベラスケス)」「17世紀オランダ美術の別格レンブラント」「かつての美術後進国フランスに設立された王立絵画彫刻アカデミー(明晰な精神と理性のプッサン芸術とフランス古典主義)」「ルイ14世死去(1715年)から生まれた繊細で華やかなロココ文化(貴族の時代)」「フランス革命と新古典主義の幕開け」「新古典主義と対立したロマン主義」「産業革命・都市の発展のなかで"現実"をそのまま描いたクールベがこじ開けた近代美術の扉」「さらに一層押し開いた近代絵画の父マネ」「文化的後進国イギリスの反撃」「身近な自然や田園風景を描いたバルビゾン派(ルソー、コロー、ミレー)」「印象派の画家とアメリカ」・・・・・。