「『震災後』ではなく『災間』を生きる日本人」から対談が始まり、日本の歴史と日本人の持つ人生観、自然観、共生する知恵を縦横に語る。7、8世紀に編まれた万葉集は知識人特有の高級な知識ではない。「民衆が発してきた声なき声であり、叫びであり・・・・・・万葉集の言の葉は深層心理、無意識下に着実に溜まっていく」「日本人が原初的な時代にもっていた心そのものを、自身の心の鏡を写すように、いつでも見ることができる」「私たちは『雑』の中に、まるで雑踏の中に身を隠すような安心感と安堵感を得ながら入りこんでいける。これが万葉集」「『人類の救済の泉』として輝き続ける万葉集」と結ぶ。
対談は縦横無尽、豊富な具体的話題・事例、知性の深い探索で面白い。「災害と鬼とヤマタノオロチ」「政治家と行政官は哲学と知性をもて」「天上世界に土足で踏み入った原子力発電の過ち」「吉田兼好の生と死を対角線上に示した三角形の生命観」「権力者をせせら笑い、突き放す『東海道中膝栗毛』(日本人の家族的"王道")」「万葉集の基底部に流れる先へ進み、つながっていく幸福観」「ウソと偽りは全く違う(ウソとアソ(遊)は同じ)、物事はウソと偽りと本当の三段階」「仏教の四恩思想、上杉鷹山の"衆生の恩"(君子は民に奉仕する義務を負う)」「万葉の時代の防人の自我の閉じ込めと皇御軍」「仙台藩に1000両貸し付けた男」「縄文時代のドングリ経済(担保と金融)」「減価償却を発明した二宮尊徳」「戦死者を"数"で認識する為政者(1人の人間を無視する勘違い)」「哲学を生んだインドの風土、不毛の大地・中国が生んだ儒教、秩序とロゴスへの信頼」「徳の名が付く天皇、武の名が付く天皇」「詩心と哲学こそが国を強くする」「政治を動かす人間には、理・知・情・欲が大事。理知と、とくに情欲の塩梅。そこに詩や歴史、哲学がある」「日本にあった歌人政治」・・・・・・。
まさに現代に活かす先人の知恵、日本人の精神。