百花.jpg人生の生老病死――。不思議にも縁あってこの世に生を受け、人を愛し親ともなり、老いて死を迎える。命に刻まれた記憶の数々。花火は消えゆくがゆえに瞬時の鮮やかさ、百花繚乱の美が際立たせる。老いは"喪失"を伴なうが、消えざるものとは一体何か。母親と息子の生命の絆、思いの深さが、美しく、強く、感動的に描かれる。素晴らしい作品。

葛西泉。就職が決まり、家を出てからもう15年が経ち、結婚もした。大晦日、実家に帰ると母・百合子がいなかった。外に出て捜すと、公園の弱々しく光る外灯の下で、ブランコに乗った母を見つける。認知症と診断され、息子をも忘れていく母。母との思い出を募らせていく泉。しぼり込まれていく百合子の記憶に、泉は母の思いの深さを知っていく。二人には忘れることができない"事件"があった。突然、百合子が家を出て、泉を1年も置き去りにした。「泉の元に帰ってきた母は、それから自分の時間と心のすべてを息子のために捧げていた。・・・・・・百合子の熾烈な決意の源流を、泉はこの日記に見た。母は一生かけて、あの一年分の贖罪をしていくことに決めたのかもしれない」。

「半分の花火が見たい。半分の花火をあなたと見たいの」「言葉を失い、名前を忘れてしまったとしても、泉との思い出だけは残るのだろうか。いつか名前だけでなく泉そのものを忘れてしまったら、母のなかに自分のなにが残るのだろうか」「次々と打ち上がる半分の花火。泉と百合子が過ごした家で咲いていた数百の花のように、それが美しかったということだけを記憶に残し、やがて消えていく」・・・・・・。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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