祝祭と予感.jpg「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編小説集の6話。養蜂家の父をもち、ピアノも持たず破天荒な演奏で衝撃を与える異能の少年・風間塵、天才少女で母の死とともにピアノが弾けなくなってしまった栄伝亜夜、名門ジュリアード音楽院の俊英・マサル・C・レヴィ・アナトールら芳ヶ江国際ピアノコンクールで競った若者たちの周辺で何が起きていたか。背景にある師匠らの人間模様が描かれ面白い。一期一会というが、人生は不思議な縁によって彩りを獲得するものだ。

マサルと亜夜に風間塵が加わり、恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」に始まる。「獅子と芍薬」では、芳ヶ江国際ピアノコンクールの審査員・ナサニエル・シルヴァーバーグと嵯峨三枝子の若き頃、30年前のドラマチックな出会い。作曲家・菱沼忠明が、課題曲「春と修羅」を作るきっかけとなった早逝した小山内健次。「そもそも音ってのは、楽譜で弾ける平均律に収まるような代物じゃない。・・・・・・音楽を記譜に寄せるのはそこそこにしとけ。記譜のほうを音楽に寄せるんだ。音楽を譲るな」という「袈裟と鞦韆」。マサルとナサニエルの師弟の絆と戦略を描いた「竪琴と葦笛」。

「鈴蘭と階段」――ヴィオラを求める栄伝亜夜の友人・奏。楽器との相性があり「知らず知らずのうちに、ヴィオラの世界を、イメージを、可能性を、ステレオタイプに限定していたのではないか。あたしはヴィオラの豊かさと包容力をみくびっていた」と奥深い世界を描く。「伝説と予感」――風間塵のピアノに、巨匠・ユウジ・フォン・ホフマンが受けた恐怖にも似た衝撃と戦慄。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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