宇宙の森羅万象について、宗教や哲学はその法理を「名付け」「解釈」を施すが、次第に正確に伝えられなくなる。数学は宇宙・森羅万象の法理を数学という「言葉」によって明らかにするが、重要なことは他と違って論理を共有し、正確に伝え伝搬していくということだ。「定義」に基づき、論理を積み重ねる。数学語を共通語として使っていくということだ。新井先生は「この本の目的は、『数学語を第三言語として身につける』こと。言語の本ですから『ナマモノ』の数学に出てくる補助線の引き方やつるかめ算など数学技能については勉強しません。三平方の定理やオイラーの公式のような有名な定理もやりません。その代わりに数学の文法と和文数訳、数文和訳、そして数学の作文法を勉強します」という。抜群に面白い。
まず「論理の誕生」から始まる。徹底した論理の共通言語・数学語。まず「定義」――点とは、線とは、面とは、偶数とは、素数とは。数学の文法、そこで必要となる論理結合子。和文数訳(「等しい」=、「大小」<、「属する」∉。そして論理結合子の「否定」¬、「かつ」∧、「または」∨、「ならば」→、「同値」↔、「すべての」∀、「存在する」∃)。そして数学和訳(日本語は否定が文の最後尾につくので、あやふやになる難しさがある)。「数学を表現するには、自然言語はあまりに大雑把」「数訳の困難さ」等が示される。そして「証明とは何か」「数学の作文(集合と論理、数学的帰納法、『補題』はなぜ必要か)」「終章――ふたたび古代ギリシャへ(円の面積の証明)」・・・・・・。
数学の世界の入り口に立ち、"新鮮"さとともに、迫力があって浴びせ倒される感がした。