職場を不当解雇され犯罪を犯したところを、伯母の柳澤千舟に救われた玲斗。千舟は「私はあなたのお母さん、美千恵さんの姉(異母姉妹)です」「あなたにしてもらいたいこと――それはクスノキの番人です」という。柳澤家の敷地内に神社があり、そこに中が空洞となっているクスノキの巨木があって、管理をするように命じられたのだ。そのクスノキには不思議な力があり、その木に祈れば願いが叶うといわれていた。
「新月と満月の夜に祈念する」「クスノキに入れるのは一人」「祈念の内容は極秘」などのルールがあるが、「念」を預け、「念」を受念する――。言葉にならない心の深層を預け、受け取る"祈りの儀式"が繰り返されるなかで、家族のわだかまりが消えたり、切ない思いが理解されたり、新たなスタートが決断されたりする。一念の深さ、重さ、祈りと生死を感じさせる。
「クスノキの番人」である柳澤千舟の品格・誇り・責任と、それを受け継ぐ玲斗の純朴さ・成長がリズムを奏で、鮮やかな感動作となっている。