ハビタブル.jpg「系外惑星が示す生命像の変容と転換」が副題。太陽とは別の恒星をめぐる惑星である「系外惑星」――。初めて発見されたのが1995年、太陽系とは似ても似つかぬ至近距離で恒星を周回する加熱された「ホット・ジュピター」。2010年代初頭には発見数は500個を超え、2019年では4000個近い系外惑星が確認されている。そこで、海を持ち生命を宿す系外惑星は多数存在するのか。適温と水(液体)が存在できる軌道の範囲を「ハビタブル・ゾーン」というが、地球サイズや少し大きい惑星(スーパーアース)で、「ハビタブル・ゾーン」にあるものは何十個と発見されているという。大変な勢いだ。

しかし、そこで「地球のような生命、地球のような生物の進化と環境」の呪縛から脱せよ。太陽系の構造が惑星系の標準的姿とする「太陽系中心主義」や、生命を宿す天体に対する考え方も地球のような惑星と考える「地球中心主義」、生命は必然的に人類という到達点に向けて進化する「人間中心主義」から離れよ、という。太陽系の地球しか知らなかった私たちは、「第2の地球」や「地球に似た惑星」を探しがちだが、"異界"の現実・真実を求めるべきだ。そして今がコペルニクスやガリレオの時代のような大転機だという。本書を読んで納得する。それは私たちの存在がノーマルに定置されることになる。

系外惑星研究は、宇宙科学と生命科学を結節する。井田教授のいう宇宙の始まりや天文学・物理学の「天空の科学」と、医学・脳科学・環境科学・地球科学などの「私につながる科学」が交錯する研究分野の進展だ。「天空の科学」では、ブラックホール、ダークマター(実在)、ダークエネルギー(仮説)、ビックバン宇宙、ヒッグス粒子(質量を与える)、超ひも理論等が概説されるが、これがきわめて解り易く面白い。「私につながる科学」では、地球科学における革命・プレートテクトニクス理論、地震、気候変動と地球の温暖化(科学と政治のせめぎ合い)、地球の経験した気温変化と人類自らが原因となった短期の環境変化、遺伝と生命の進化、ゲノム解析、キリスト教とダーウィン進化論の対立、生命の起源・・・・・・。そして「天空と私が交錯する『ハビタブル天体』」では、系外惑星の発見のみちのり、ハビタブル惑星の発見、赤色矮星の惑星、エンケラドス・エウロパ・タイタン等のハビタブル衛星、地球外生命、地球外知的生命と意識の起源等が語られる。

地球も生命の進化も、別様のかたちがいくらでもあり得るという新たな地平が勢いをもって開かれている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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