「良い小説と悪い小説を見分けるには」「良い小説の定義は? 自分に正直な小説です。・・・・・・まず自分が書くことに心を打たれないと」・・・・・・。当然、国家が評価するようなものではない。
小説家・マッツ夢井のもとに一通の手紙が届く。「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会」とある。無視していると「召喚状」が届き、召喚されてC駅まで赴くと、海崖にある「七福神療養所」に連れてこられる。療養所というが、自由を完全に奪われた強制収容所だ。反社会的な作家たちを"更生"させる施設だという。「社会に適応した小説を書け」と命ぜられ、反抗できない者はあの手この手で、狂うのを待たれ、弱い人間は何人も崖から飛び降り死んでいた。社会と隔絶された収容所での悪夢がこれでもかこれでもかとマッツに迫り、精根尽き果てる。
「『表現の不自由』の近未来を描く、戦慄の警世小説」と帯にある。近未来でも、あってはならないことだし、人権感覚の摩耗を防ぎ磨くことだ。