野良犬の値段.jpgまことに不思議な誘拐事件が起きた。誘拐され人質になったのは会社の社長でもなければ金持ちの息子でも娘でもない。なんとホームレス。それも6人も揃ってだ。電話での脅迫ではなく、「誘拐サイト」を立ち上げて。しかもその相手は、名だたるメディア4社。

当初は、たんなるイタズラ、愉快犯の仕業と思われた。しかし、要求を飲まない場合は「人質を殺す」と脅し、その通り、渋谷に一人の人質の"首"が晒される。世論は緊張の度を増し、ツイート数は急増する。そして、2人目の殺人が続き、名指しされたメディア、警察は翻弄される。ネットを中心とした世論も、誘拐犯やメディアの印象操作、心理戦によって揺さぶられ変化していく。"潮目"の見きわめ――現代ネット社会の危うさ、脆弱性が、このネットを通じての"劇場型"誘拐事件として鮮烈に描かれる。犯人はいったい何を狙っているのか。

皮肉や風刺もエッジがきいている。正義を装う"偽善的論調"、ネット社会の暴走と脆弱性、キャッチフレーズ社会の浅薄さ・・・・・・。弱者に追い打ちをかける現代格差社会の矛盾と怒りが、"ホームレス"を題材として問題提起される。"野良犬の値段"だ。すでに始まっている新たなネット社会の負の断面を鮮やかに描いた傑作。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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