日本の医療の不都合な真実.jpg「コロナ禍で見えた『世界最高レベルの医療』の裏側」が副題。コロナ感染症が拡大し、緊急事態宣言が発令されている今、最も問題となっている医療の逼迫、「世界一病床が多い日本で、なぜ医療崩壊が叫ばれるのか」という疑問に、「日本の医療の構造問題」「豊富な日本の医療資源に対し、致命的な機動性の欠如」があること、"不都合な真実"を明らかにする。森田さんは医師・医療経済ジャーナリスト。財政破綻、市立総合病院が閉館された夕張市で地域医療に従事した経歴をもつ。本書は昨年8月に執筆されたものだが、今年の月刊誌2月号でも所見が掲載されており、構造分析は今も生々しい。

まず「コロナ禍で起きた『おかしなこと』」――。「日本では超過死亡(平年を超える死亡率・死亡数)はほぼ発生していない」「東アジアの低い死亡率(欧米の100分の1)の理由――BCG仮説、交差免疫仮説(東アジアには集団免疫的なものができあがっていた)」「日本の160万床のうち、コロナ対策病床はわずか1.9%だった(昨年7月)」「病床かホテルかの枝葉ではなく、世界一潤沢な医療資源を有事の際にスピーディーに運用・活用できない日本の医療システム問題」「死亡者のほとんどは高齢者。肺炎で死亡するのも毎年、高齢者を中心に約10万人」・・・・・・。

「人はウイルスとは戦えない」――。「検査好きの日本人、ヨーロッパは"家庭医制度"、日頃は検査に頼らない欧米だからこそ検査数拡大路線を今回とった」「ウイルスは駆逐不可能、共存しながら免疫を鍛えることが必要(細菌は抗生剤で殺すが、ウイルスは増殖を抑えるのが抗インフルエンザ薬)」「家庭医療・総合医療のプライマリーケアを核とするヨーロッパの医療制度」「公立・公的病院の多いヨーロッパ(ドイツは65%)は、いざ鎌倉の医療体制ができた」・・・・・・。

「日本の医療をめぐる7つの誤解」――。「病床数と医療費は80~90年代に急増、診療報酬抑制で"薄利多売"モデルとなって患者と受診回数を増やし、ベッドを埋める。認知症患者を精神病院で引き受ける。一般病床も急性期医療だけでない慢性期医療が占めている」・・・・・・。こうして「病院が"集患"して満床をめざし、国の医療費が上がる。国はそこで、診療報酬を低くする。すると病院は削られた分を回数で稼ぎ、満床をめざすため、いざ急患が発生しても地域の病院は満床で受け入れられない。だから日本の民間病院は自主的にコロナパンデミックのために病床を空けられないし、医師も多忙をきわめる」という。市場の失敗の原因は、これも悪循環で「モラルハザードと情報の非対称性」にあることを指摘する。根の深い構造問題に問題はあり、誰か「悪者」を捜すことではない。これは高齢社会の死生観、死を迎える「人を幸せにする医療とは何か」を考えることでもある。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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