翻弄.jpg四国全土を制圧しようと軍勢を動かし続けた父・元親に愛され、兄の死によって四男でありながら家を継いだ長宗我部盛親。天下の実権を握る家康の後継者・徳川秀忠。天下分け目の関ヶ原――。兵も出さずに敗軍の将となった盛親、一方で合戦に間に合わなかった秀忠。二人は共にこの関ヶ原で宿命的ともいうべき深い傷を負う。「人は運命から置き去りにされるときがある」「取り返そうとするほど失敗の傷は深くなる」「己の未来を他人に任せる不安はたまらない」と、運命に翻弄される名将の子である二人を対比させながら戦国の智略、攻防を描いた意欲的な傑作。

武将としての鍛えが未熟な二人だが、そこを奸臣に踊らされ国を失った盛親と、家康によって師弟のように智略・軍略・人間学を厳しく叩き込まれた秀忠の決定的な差が、無念の最期と天下の将軍へと帰結する。

本書は家康の戦略論であり、人間学であり、リーダー論である。「今はまずい。福松(忠吉)に人が集まりすぎている。これに浮かれては面倒になる」「関ヶ原の合戦からわずか14日で、盛親は兄(津野親忠)と藤堂高虎という有力な伝手の両方を失った」「(関ヶ原の合戦)まずこれを秀頼に公儀の戦いと認めさせなければいけない。石田治郎少輔謀反の一件、その始末をご一任いただくよう・・・・・・」「長松(秀忠)、よく覚えておくがいい。・・・・・・よき家臣をもつ。これが主君たるものの目標じゃ」「(本多)正純のいうことを信用するな。・・・・・・正義だけでは戦に勝てぬ。謀臣というのもおらねばの。要は適材適所、使う者の器量よ」「天下の戦はもう終わったと思っておる。これからは戦上手より政ができるかどうかに重きをおくべきだ。政で支配する世になる」「今の儂が豊臣征伐を言い出したところで、それは謀反でしかない。天下が認めぬ。豊臣の威勢が落ちるまで・・・・・・。中納言、淀を脅せ」「若さが毒(なんでもできると根拠のない自信)と、老いの毒(ときがないと焦る)よ」「そなたも相応の苦労をいたせば、こやつや彦右衛門のような家臣を得られる。主君というのは、その家に生まれただけではなれぬのだ。家臣とともに苦労を重ね、少しずつでも領土を増やし、生活を楽にしてやって・・・・・・。主君は家臣がいてこそである」「やれるときには徹底してやる。敵対した者は滅ぼして当然。情など不要。人ではなく神になれ。それが天下人じゃ」「家康が征夷大将軍に任ぜられる(慶長8年、1603年2月)。それを2年2か月で秀忠に譲る」「捨てかまり。これがどれだけ薩摩の武名を高めたか」「豊臣に手を貸す連中の兵と名のある将が、異国で散ってくれた。わざと大名の中に不満を残した」・・・・・・。そうして大坂冬の陣、夏の陣。いかに家康が知謀をめぐらしたかが、滲み出る。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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