人新世の「資本論」.jpg地球が新たな年代に突入した「人新生(ひとしんせい)」(ノーベル化学賞受賞のパウル・クルッツェンが地質学的に見て名付けた)。人工物が地球の表面を覆い尽くした時代の「人新生」。人類の経済活動が地球を破壊する「人新生」=環境危機の時代。レジ袋やプラゴミ削減などの温暖化対策も、新たな経済成長を企図するグリーン・ニューディールも、政府や企業あげてのSDGsも、ノーベル経済学賞(2018年)ノードハウスの気候変動の経済学も人新生の気候変動対策にはならない。資本主義の際限なき利瀾追求、経済成長ある限り、地球環境が危機に陥るのは必然であり、資本主義による収奪は労働だけではなく、地球環境全体なのだ、と言い切る。スティグリッツの「プログレッシブ・キャピタリズム」も、広井良典の「定常化社会」も、「技術革新の加速化」も資本主義を止めない限り、脱成長はできないという。

ヒントは晩期マルクスの思想のなかにあり、マイケル・ハート等のいう「コモン」という概念だ。晩期マルクスは「生産力至上主義とヨーロッパ中心主義」の進歩史視を転換し、エコロジカルな視点を抱いていたという。「脱成長コミュニズム」という訳だ。「"コモン"を取り戻すのがコミュニズム」「"コモン"のポイントは、人々が生産手段を自律的・水平的に共同管理する」というが、具体策の例として「市民電力やエネルギー協同組合による再生エネルギーの普及」「耕作放棄地への太陽光パネルの設置」「ワーカーズ・コープ」「人工的希少性の領域を減らし、消費主義・物質主義から決別した"ラディカルな潤沢さ"の増加」「使用価値(有用性)に重きを置いた経済に転換して、大量生産・大量消費から脱却する」「生産の目的を商品としての"価値"の増大ではなく"使用価値"にして、生産を社会的な計画のもとに置く」「バルセロナの気候非常事態宣言」などを紹介、指摘する。「資本と労働」「下部構造が上部構造を決定する」等、19世紀のマルクスにこだわる必要はないし、無理があるのではないか。矛盾撞着の人間、喜怒哀楽・生老病死の人間論、依正不二の人間哲学がヨーロッパ近代に不足し、人間と自然の対立図式が内包されていること等の自覚をもって、地球環境問題に取り組むことが不可欠だと思う。地球環境が深刻な危機にあることは間違いないのだから。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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