おれたちの歌をうたえ.jpg今はデリヘルの運転手をしている元刑事・河辺久則に、幼馴染の五味佐登志が死んだという連絡が入る。電話をかけてきたのは、松本市で五味の世話をしてきたという金髪・坊主頭の若いチンピラ・茂田斗夢。駆けつけた河辺は、すぐこれは他殺だと見抜くが、そこには永井荷風の文庫本があり、詩のような暗号が書かれていた。歳も違う2人は、ぶつかりながらも犯人捜しをしようとする。じつは、河辺や五味は小学生の時代の昭和47年、連合赤軍事件等の過激派の指名手配犯逮捕に協力したということで、地元上田市では「栄光の五人組」と呼ばれた仲良し五人組であった。しかし51年、雪の降る日に大事件が勃発する。彼らのよく知る美しい女性・竹内千百合が殺され、その父親が犯人と思って岩村母子を殺害して、自らも命を絶ったのだ。その後、過激派の男と千百合は"心中した"として片づけられたが、疑念は残り続けた。その後、平成11年には"千百合殺し"の件で脅迫事件が起きたりし、令和元年になって佐登志が殺され、謎の暗号を残したのだ。

上田・松本・旧真田村と長野県を舞台にし、連合赤軍事件、過激派、バブルとその崩壊、冬季長野オリンピック、金融危機、そして令和。東日本豪雨での事件の結末・・・・・・。雪の光景、昭和40年代には確かに息づいていた永井荷風や中原中也、太宰治らの文学作品や音楽・歌。荒々しいエネルギーがあった時代、遭遇した恐るべき事件――。そのなかで"栄光の五人組"は翻弄され、人間関係は大きく変質していく。衝撃の過去を背負った者は、それを忘れることはできないが、どう未来に進んでいくのか。揺れ動く時代のなかで「おれたちの歌をうたえ」という仲間の一筋は確かに貫かれている。著者のエネルギーが伝わる長編傑作。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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