「ブロードキャスト」に続く高校部活シリーズ第2弾。中学時代に陸上部に所属していた町田圭祐。駅伝で全国大会をめざしていたが県大会で僅差で敗れた。エースの山岸良太が出れなかったのだ。二人は陸上の強豪校である青海学院高校に進むが、圭祐は入学直前に交通事故に遭い、同じ中学出身の宮本正也に誘われ放送部に入部する。3年生が引退後、圭祐は2年生4人(白井律部長、蒼、黒田、翠)と同期の正也、久米さんと共に、全国大会めざし、テレビドキュメント部門の題材として「陸上部の活動」をやろうとして、ドローンまで使って撮影に入る。ところがこのドローン動画の中に、火のついた煙草を持って部室から出てくる親友・良太の姿が映り、驚愕する。「そんな良太ではない」「誰かが、良太を、陸上部を貶めようとしたのか」――放送部のそれぞれの人間関係の裏の姿が明らかになっていく。
コロナ禍で十分な部活ができない。新入生が入ってこない。オンラインだけでは本当の人間の接触ができない。練習も指導も友情も中途半端になることを読後に現在の日本を思いハッとする。高校時代は青春まっただなか。社会や友人との出会いのインパクトの強さ。本書の事件も「悪」というより純粋な「ひたむきさ」を感じさせる。
放送部が撮ろうとした映像。撮られたくない者もいる。映像が一人歩きしたり、悪用されるこのSNS社会のデリケートさと各個人の思惑。「伝える」ということがいかに難しいか。こちらの善意の思い込みが、他の人には善意や正義の押し付けになったりもする。青春時代はそんな未熟さが魅力でもあるし、思わぬ刃ともなる。「どうして俺はレンズのこちら側にいるのだろう」と圭祐はつぶやくが、その通り、人生には悔恨もあれば希望を見出そうとする意志もある。