「資源争奪の世界史」が表題だが、「世界は資源争奪の歴史であった」ことが鮮やかにわかる。最初の資源はスパイス。コロンブス、バスコ・ダ・ガマ、マゼラン。それがポルトガル、スペイン、オランダ、それにイギリスが加わり、東インド会社設立を始めとする植民地争奪戦となり、勢い本国の戦いとなっていく。「石炭の登場」は森林破壊を防ぎ、イギリスの産業革命を起こす。石炭は蒸気船、蒸気機関車を生み日本にはペリーが来航する。そして19世紀後半から一攫千金のオイルラッシュだ。ロックフェラーが石油に目をつけ、いよいよガソリン車の登場。石油争奪は第一次、第二次世界大戦を左右した。2000年代はシェールガス革命だ。そして地球温暖化問題、SDGsの登場。蒸気機関、電気、コンピュータ、それに続くICT活用のインダストリー4.0は、エネルギー、資源の角度で見れば、まさに今新しい世界史に突入する歴史的な分岐点に立っているということがよくわかる。それを鮮やかに浮き彫りにしているのが本書である。
COP26のグラスゴ一合意を見ても、脱石炭・脱化石燃料、再生エネルギーへの加速、EV・自動運転への大転換は「大戦争」といってよい。世界は激震の中にあり、「エネルギー転換とサーキュラーエコノミーの構築が目指すものは、化石燃料依存から再生可能エネルギー利用に転換し、天然資源ではなく再生資源を循環させる経済モデルを構築するステージに突入している」「明確なゲームチェンジであり、チャンスだ」「日本には世界一の都市鉱山がある。日本は太陽光発電産業を牽引してきた歴史があり、高いエネルギー変換率の太陽光パネルを製造するなど再生可能エネルギー分野の高度な技術を持っている」「IoEの重要な要素となるV2Gでは、日本のチャデモが唯一実用化されているEVの急速充電設備だ(エネルギーシステムの一部となるEV)」「中国の台頭著しいリチウムイオン電池だが、そもそもリチウムイオン電池を開発したのは日本であり、注目の全固定リチウムイオン電池の開発でも特許保有など先んじている」「レアアースの一種であるジスプロシウムを一切使わないネオジム磁石をホンダが開発している」「水素の燃料電池車(FC V)のミライを送り出したのも日本だ」「浮体式洋上風力発電は世界6位の海洋面積に囲まれた日本には有力な再生エネルギーだ(ブルーエコノミー)」・・・・・・。
本書は、世界全体の熾烈な「生き残り戦争」がデータを示しつつ語られている。危機感を募らせながらも、エールを送ってくれている。頑張らねばならない。
「首都感染」「M8」「首都崩壊」「富士山噴火」など、迫りくる危機の恐怖を描き出してきた高嶋哲夫さんが、「世界からエンジン音が消える」「日本の自動車業界は生き残りをかけた戦いに勝てるか」を生々しく描く。深刻な地球温暖化のなか2050年のカーボンニュートラルを目指す世界、そのためにも2030年までの人類のCO2削減の戦いはまさに「勝負の10年」。SDGsの目標も2030年。2030年代はガソリンエンジン車の新車販売が止まる。EVと自動運転をかけて、まさに今、この時、死に物狂いの戦いが現実に行われている。
主人公は経産省・自動車課の瀬戸崎啓介、32歳。エンジン車とハイブリッド車を捨て去り、EVにすべてを投入しなければ、日本の自動車業界は崩壊し、就業人口500万人は放り出されると焦る。EVで遅れをとっている上、日本最大のヤマト自動車等がハイブリッド車への期待を残していることにさらに焦りを募らせる。経産省も「2030年にはまだハイブリッド車は安泰だ」という空気が強い。米国のステラ(テスラを想定)はEV一本で突き進み、欧米はEVに舵を切っている。中国はハイブリッド車を環境対応車と定義し、その生産をさらに続けるような構えを見せている。しかしその真意はEVにあるようで、瀬戸崎はその戦略を探ろうとする。日本の中小ベンチャー企業の新たな蓄電池部品の技術力も絡んで、世界を舞台にした争奪戦も繰り広げられる。
EV用の蓄電池の容量と寿命、燃料電池車の技術革新、EVの急進展に伴う新たな電力の確保(1000万キロワット)、充電スタンドの設置、車によるビックデータ、スーパーシティーの現実展開、新しいエネルギー循環システム・・・・・・。「エンジンがモーターに」「ガソリンタンクが蓄電池に」「ガソリンスタンドが充電スタンドに」、そして「自動車が自動運転に」「街がスーパーシティーに」・・・・・・。燃料電池車への活路も示唆する緊迫感が伝わる著作。
恋愛、結婚、職場の人間関係、契約社員、親の介護・・・・・・。ごく普通の女性が悩み、泣き、葛藤し、自分の気持ちを確かめながら歩んでいく。丁寧に心の襞を描いていく。
東京でアパレルの正社員として働いていた与野都・32歳。更年期障害を抱える母親の看病のために、茨城県の実家に戻り、アウトレットモールのショップで契約の店員として働き始める。恋愛、仕事、親の介護で、忙しい毎日、「自転と公転」の日々が続く。モール内の回転寿司店で働く貫一と出会い、愛し合うようになる。料理はうまいし、優しいが、中学卒の貫一は経済的にも不安定で、結婚についても心の整理ができない。職場でのパワハラや最悪の人間関係、両親共の健康不安など、不器用な都は戸惑い、悩み、流されていく。ごく淡々とした日常を描写するが、貫一と都(あたかも金色夜叉の貫一・お宮)がどうなるか、ハラハラする。
20年後の日本とベトナムにまで、話は展開する。"回り道"だらけの人生だが、温かい。