enu.jpg「名のない毒液と花」「落ちない魔球と鳥」「笑わない少女の死」「飛べない雄蜂の嘘」「消えない硝子の星」「眠らない刑事と犬」の6篇が6章となっている。しかもその本文が一章おきに上下逆転して印刷されているという不思議な本。読みづらいこと甚だしい。自然数=Nとすると、パターンの数はNの階乗。6ならば6×5×4×3×2×1で720通りで、「あなた自身がつくる720通りの物語」とある。どんな順番で読んでも、その物語ができるというわけだ。

「名のない毒液と花」――ペット探偵・江添&吉岡。湾に浮かぶ小さな無人島に犬を見つけようと向かうが、そこで母を失った少年を見る。「落ちない魔球と鳥」――「死んでくれない?」と大型インコのヨウムがしゃべる。その謎を解く高校生。「勝った人は強くて負けた人は弱いのか」「殿沢先輩からのあのメッセージが送られてこなかったら、本当に兄は死ななかったか」・・・・・・。「笑わない少女の死」――40年近くも教壇に立ってきた中学校の英語教師がラフカディオ・ハーンのアイルランドに行くが、英語が通じない。そこで母を亡くした少女に出会う。「少女を殺した犯人を、私だけが知っている」。

「飛べない雄蜂の嘘」――「お前が俺の人生をこんなふうにした」と暴力をエスカレートさせた男を殺す。「俺、この男を殺しに来たんです」と遺体をボートで運んでくれた侵入者の正体とは・・・・・・。「消えない硝子の星」――アイルランドで看護師として働く男。終末期医療を受けている母ホリー、そして娘のオリアナ。「カズマ、ママの病気が治らないこと、わたし、ずっとわかってたの」「神はいるか。神様はいない、不信心な私も、実際のところ、そう思って生きてきた。でも、人間だって無能じゃない。できることはたくさんある」「ホリーがあんなに生きてくれたこと。オリアナがふたたび笑顔を見せてくれたこと」・・・・・・。奇跡を観た看護師の話。「眠らない刑事と犬」――街で50年ぶりに起きた殺人事件。その夜、一匹の犬が殺人現場から姿を消す。ペット探偵が動くが、それを女性刑事が追う。「私も江添の母親と同じだったのだ。いちばん信じなければいけない相手を疑ってしまった」・・・・・・。

1つ1つが、かなり濃密な人間心理の深層を抉る物語。


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青空が広がり、この季節では少し暖かい感じの12日、地元・滝野川さくら通り商栄会(中田寿会長)による年賀提灯の点灯式が行われました。点灯の瞬間、ワッと歓声。イルミネーションとは一味違う柔らかな光に、街に元気が広がるようでした。板橋駅東口(滝野川口)もきれいに整備されてきました。コロナで明け暮れた今年もあと3週間。日常が戻り始めました。


sokobore.jpg物語は極めてシンプル。しかし、帯にあるように主人公の語り(青山文平さんの語り)、そのリズムに酔う江戸の街の感動作。

一季奉公を重ねて42歳にもなった男――。一万石を超える貧乏藩の江戸屋敷。そのお手つき女中・芳の二度と戻れぬ宿下がりの同行を命じられる。芳は殿様を退かされた老公(といっても今21)に底惚れしており、男はまた密かに芳に想いを寄せていた。同行する2人。初めての極楽を味わったその夜、芳は男を刺し、そのまま姿を消す。「俺の腹に突き刺さった匕首」「お殿様を笑い者なんかにさせない」「芳は百姓の嫁に収まるつもりになんぞ毛頭ねい」・・・・・・。「すんげえなあ、芳は。あんなすんげえ女に終わらせてもらえて。ありがたさが染みいる」のだが、男は一命を取り止めてしまう。

男は「芳は自分が人を殺したことを信じ込んでいる」「人を殺めていないことを芳に伝えたい」「芳はどっかの岡場所に沈んでるんだろう」と懸命に生き、やがて江戸の岡場所の顔になる。ひたすら芳を探し、待つのだ。それを助ける銀次、かつての大名屋敷で働いていた下女・信。銀次が抱えたもの、信が持ち続けた底惚れ。貧しい江戸庶民の姿、その心に沈潜する一途の愛が、感動的に浮かび上がる。


seikaiwokaeru.jpg「行き過ぎた資本主義に対する反省から、日本でも『脱成長』の思想がブームになりつつある。背景にはグローバルな資本主義が環境破壊や人的搾取、分断社会をもたらしたことへの反省と批判の眼差しがある。だが、各国がSDGsという共通の課題に向き合っていく大きな流れの中で、日本だけが『脱成長』へとシフトする展開は非常に危険である。『脱成長』は思想停止と紙一重だ」「世界はGAFAMなどのテック企業の進歩が止まらない。むしろテクノロジーを加速させて、気候変動、食糧不足、教育格差といった社会課題を、ビジネスチャンスに変えている」という。

副題は「SDGsESGの最前線」だ。ESG投資とは環境、社会、企業統治の頭文字をとったもので、2025年には世界で運用資産が53兆ドルを超えるともいわれている。企業価値を考えても、ESGに根ざした投資は、もはやビジネスの"参加条件"。今でさえ遅れている日本が「脱成長」に浸っていてはならない、と具体的に指摘し、2030年の先を行く企業が今狙い動いていることを、「SDGsESGの最前線」として、GAFAM、テスラ、セールスフォース、アマゾン、日本のソニーなどの現実の挑戦を示す。社会は激変していることを痛いほど実感する。

2030年の世界を救うテクノロジー――。「食料不足×フードテック――700兆円市場が見込まれ、畜産業は動物にも地球にも優しくない」「教育格差×エドテック――コロナ禍が押し広げたエドテックの可能性」「医療・介護×ヘルステック――健診レベルのデータが毎日取れる」「気候変動×クリーンテック――テスラのソーラー事業、水素エネルギーはなぜ普及しないか」「大量廃棄×リサイクル――アップルが100%リサイクル素材使用に、リサイクル・リユース前提のものづくりへ」・・・・・・。「ESGの先頭を独走するアップルの理念とアクション」「企業理念=ESGが強みのテスラ」「ESG経営に積極的なアマゾン」「セールスフォース・ドットコムによるホームレス支援」「エネルギー業界の激変とEVへ」などを示しつつ、日本企業への処方箋と政府と企業の役割分担を語る。


tamiou.jpg未知のウイルスに襲われた日本。武藤泰山総理と息子・翔が立ち向かう。そのウイルスはなんとシベリアの冷凍マンモスから飛び出したもの。かつて眉村紗英の父・古沢恭一がサハ共和国で起きたという集団感染の話を聞き研究。冷凍マンモスからのウイルスにたどり着いたようだったが突然、古沢恭一は自殺してしまう。

泰山は緊急事態宣言を発出するが、周りの政治家や都知事はそれに大反対、デモ・暴動にさらされる。一つはそのウイルスをめぐっての企業やテロ組織の陰謀、もう一つは武藤政権を倒そうと謀る政争。ともに武藤親子や紗英らが体当たりで解決する。とくにデモ・暴動自体が「大勢の人たちが疑心暗鬼になり、不寛容であり続け、大規模デモに訴える症状がウイルスを原因とする」「荒唐無稽な噂話を信じた人たちは、新種のウイルスに感染していた」というのだ。政治家としての信念をデモ隊に向かって身体を張って演説する武藤総理は痛快ではあるが、狂騒曲、マンガチックな展開。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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