明暦の大火(振袖火事) (1657年1月、将軍家綱)は、江戸城をはじめ市中の6割を消失させ、死者は10万人にも及んだというが、「反幕浪人による放火ではないか」との噂はその後も残っていた。大火後も、浪人が跋扈し、火付盗賊、火事場泥棒、辻斬りが繰り返される江戸。しかも老中と御三家の緊張関係が続き、その中には振袖火事の真相をめぐる政争もあった。徳川の治世はこの時、まだ定まっていない。
その再建の任を受けたのが、若き頃は遊蕩狼藉で知られていた水戸光國。江戸の再建、学問の振興、治安にと情熱を注いでいた。幕府には捨て子を保護し、間諜として育てる隠密組織「拾人衆」なるものがあった。父を旗本奴に殺された無宿者の少年・ 六維了助は、それに加わり、光國からも目をかけられていた。そして、仲間とともに火付盗賊「極楽組」を追う。そんななか、父の死の真相について、光國が悪い仲間にそそのかされて手を下したという驚愕の事実を知る。了助のやりきれぬ心境、光國の深き悔恨の入り混じるなか、了助は、柳生列堂義仙(柳生の末子)とともに、極楽組を追い日光へと向かう。義仙と極楽組の激しい知恵比べだ。道中での各組織入り乱れる諜報と戦闘が繰り広げられる。