sekai.jpg「美しくも過激な量子論」が副題。著者は「時間は存在しない」の著書でも名高い理論物理学者で「ループ量子重力理論」の提唱者の一人。竹内薫氏の解説がついている。単なる量子物理学の解説書、難解な数式を駆使しての書ではない。「科学とは世界を概念化する新しい方法を探ること」であり、物理学もそのルーツをたどれば「自然哲学」であり、この世界をひもとく思想である。コペルニクスの地動説、ニュートン力学、ダーウィンの進化論、アインシュタインの相対性理論を経て、古典力学では捉え切れない一見奇異な量子現象をとらえる「量子論」が、いかに人類の世界観にインパクトを与えたか、量子物理学の真髄を解き明かそうとしたのが本書だ。したがってロヴェッリの思索の旅は物理学にとどまらず、あらゆる思想・哲学に及ぶ。ハイゼンベルクのみならずボグダーノフ、レーニンの政治まで及ぶが、特に「量子理論」がナーガールジュナ(龍樹)の「空」の哲学にまで結びついていく。「びっくり仰天した」とロヴェッリはその衝撃を語るが、圧巻であり、興奮を私自身、共にする思いだ。

科学界最大の発見である量子論の核心とは何か。時は1925年夏、物質粒子を追い求めてきた世界に、量子論を着想したドイツの青年、ハイゼンベルクが登場する。そして本書は、ハイゼンベルクやシュレーディンガーらの戦いをドラマチックに表現する。ミクロの世界の深淵に迫れば、「物理学は長い時間をかけて、物質から分子、原子、場、素粒子・・・・・・というふうに『究極の実体』追い求めてきた。そのあげく、量子場の理論と一般相対論のややこしい関係に乗り上げて、にっちもさっちもいかなくなった」、そして「この世界は実体ではなく、関係に基づいて構成されている」「あくまでも相互依存と偶発的な出来事の世界であって、『絶対的な存在』を引き出そうとするべきではない。根源的な確かさの不在こそ、知の探求を育む」「私たちが観察しているこの世界は、絶えず相互に作用しあっている。それは濃密な相互作用の網なのだ」「『シュレーディンガーの猫』の思考実験が示すように、量子は確率的で重ね合わせされた状態にある」・・・・・・。

量子力学は「粒子と波の二重性(本質は波)」「観測するまで実在しないという非実在性」「位置と速度は同時に決まらないという不確定性(古典力学では確定)」「エネルギーの壁をすり抜けるトンネル効果」などの特徴をもつが、本書はその歴史的な数々の論争をドラマチックに再現する。そして宇宙とは何か、世界とは何かの命題に、物理・科学者だけでなく哲学者・宗教者等がいかに迫ったか、そして今も挑戦しているかを生きいきと描く。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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