mutekino.jpg「このところ日本社会には反知性主義が蔓延しているのではないか。与野党問わず数多くの政治家の発言から、知性の煌きが感じ取れません。教養という言葉は、どこに消えたのか」「日本の政治家や実業家の話は、・・・・・・エピソードの羅列で、これらのエピソードに通底する普遍的規則を導き出そうとしていない。・・・・・・このような本の読み方をやめなくては日本の知力も国力も弱っていく」と、池上さんと佐藤さんは嘆く。現在、眼前にある諸問題について、その本質を見抜く「読解力」を具体的に示す。

ベルクソンは「問題は正しく提起されたときそれ自体が解決である」と言ったが、問題提起それ自体に、すでに「読解力」の蓄積が現れるということだろう。毎日毎日、「これはどういうことなのか」と不断に問い続ける姿勢、日頃から「学ぶ」姿勢を続けなければ、本質が見えてこないと痛感する。ましてや政治家は常にポピュリズムへの誘惑と権力の魔性にどう耐え得るかが試されている。だからこそ、鍛えられた知性、教養、国家観や人生観など哲学が大事だ。かつ、思考停止に堕しかねないイデオロギーに、吸収されない現場主義が重要だと思う。

本書で扱う問題は、現在ある重要課題だ。「人新世から見た仕事論」――。そこでは「前資本主義の方が、コモンズ(公共財)に結びついており、豊かで無償で潤沢だった」「エネルギー問題をどうするか。清貧の思想の再確認に陥るか」「ブルシット・ジョブはマルクスの疎外論の大前提」などが語られる。「米中対立 新冷戦か帝国主義抗争か」ーー。「ミアシャイマーの米中対立・限定的な核戦争の懸念も」「帝国と帝国主義の違い、ネットワーク支配とネイションステート」「中国は文明の受容はうまいが、文化の受容の難しさが皮膚感覚でわかっていないかも」「クレバーなオバマの対中封じ込めと、バイデンの稚拙な体制間戦争意識」「すでにものづくりの世界の中心は中国、ユーラシア・サプライチェーンの形成」「勇ましい人は例外なく難しい交渉を経験したことのない人だ」「中国とは挨拶はするけど握手はしない。柔軟な日中関係」・・・・・・。

「オリンピックはなぜやめられなかったか」――。「オリンピックとガダルカナル、戦術変更に伴う高い埋没コストで後戻りできないという感覚」「複数の部分合理性を知ることの重要性」・・・・・・。「日本人論の名著を再読する」――。「『菊と刀』の影響と間違い。日本人は恥だけを規範にして生きていない」「大きな役割を果たしたライシャワー大使」・・・・・・。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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