nihonkeizai.jpg「日本経済の運営において、1%をはっきり上回る実質経済成長、2%のインフレ率を短期間で実現することばかりにフォーカスするのではなく、よりミクロに、そしてより長期でみた、経済の供給面での変革を通じた成長率の向上を目指すべきだ。それは成長志向の誤謬から抜け出すことでもある。令和の時代の日本のマクロ安定化政策は、そうした方向性をより意識したものであってほしい」「日本経済の粘着性を前提とすれば、それら目標の短期間での実現は、実は『ないものねだり』だったのかもしれない」「日本経済にはもう長いこと『不振感』が付きまとっている」という。そして「時代の急速な変化で必要とされる財・サービスが大きく変化するなか、構造改革が徹底されないまま、金融緩和や財政出動などのマクロ政策で一気に成長させようとしても難しい」というのだが、「成長志向の誤謬」とまで言うのはどうだろう。

「潜在成長率の引き上げは、新しい分野へと労働、資本といった生産要素を移動させることを通じて実現されるものであり、それがマクロ経済の構造変化だ」「日本経済に構造変化を促す力への対応が十分進まなかった。そうした対応とは経済の供給構造を新しい自律的・持続的な需要にフィットしたものへと変えていくことである」「日本経済にさらに構造変化を促す7つの力――①人口減少・高齢化②グローバル化③技術革新④所得格差⑤地球環境保全⑥行き過ぎた金融化の是正⑦コロナ禍後の社会」「もはや持続的な成長が期待できない『古い重要』に対応した供給構造から、成長を生み出す『新しい重要』に合致した構造への転換を強力に進める必要がある」と指摘する。日銀出身の著者だけに「金融政策」がかなりの部分を占めて論述するが、財政政策についてより積極的に手を打つ必要があると私は思っている。「規律ある弾力的な財政支出」を示しているが、この30年間、歳出増は社会保障の増大に食われていることを指摘しており、国民生活を豊かにし、需要喚起をもたらす財政出動は、防災・減災や健康・医療・介護等のインフラ整備も含めて重要だ。「公債等残高の対名目GDP比率の収束と発散」についても論じている。金融緩和の強化や総需要刺激だけでデフレ解消はできない、それはその通りで、中身をよく点検し、総合的な「マイルドなデフレ」という極めて厄介な難題に取り組んでいかなければならない。ブレずに、強い意思を持って。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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