jinkou.jpg「人口減少を止める方策はあるのか」が副題。急激な人口減少に直面している日本。「人口貯金を使い果たし、2008年、人口減少の局面に入った日本」「2005年、過去最低の出生率1.26となり、若干の上昇が見られたもの の再び低下に転じ低い水準のままの日本」「失われた第三次ベビーブーム世代」「人口減少はいったん動きだすと止まらない」「毎年、政令指定都市クラスの人口が消失していく」「人口減少は地方から始まるが大都市も早晩、急速に減少局面に入る」「若年世代から人口が減っていく」「人口ボーナスから人口オーナスヘ」「このままいけば2110年には約5,300万人に」・・・・・・。なんとか「1億人国家」を実現できないか、その切実な願いを小説として、政府内の人口戦略検討本部による「人口戦略法案」「国会論戦」を通じて生々しく描く。確かにここまでやらないと人口減少は止められない。また時間も切迫している。若々しい国であった日本が、年老いた日本となることを止めなくてはならない。

「晩婚化から非婚化へ、晩産化から少産化・非産化へ」「出産をめぐる3人目の壁と年齢の壁」「共働きの実態と、仕事と育児の両立支援策」「スウェーデンやドイツの出生率回復策」など、出生率低下の構造・要因分析や制度をめぐる議論が紹介される。そして出生率向上のための三本柱「子ども保険」「不妊治療・ライフプラン」「結婚支援」を提起する。特に子ども保険は、新しい保険制度の創設だけに、相当踏み込んでいるが、そこまでやらなければ人口減少は止まらないということだ。当然ながら「若者に焦点を当てた地方創生」「外国人労働者と移民政策という難問」にも論及する。

「人口戦略法案」の中身は、「組織と制度・予算」が車の両輪となる。目標として「2060年に1億人の人口を維持し、2100年に9,000万人」「2040年に人口置換水準の2.07を達成し、年間出生数100万人を中期目標」とする。「短期目標は出生率で、2025年に1.62030年に1.8」と高いハードルにする。ただし結婚や出産は個人の決定に基づくものであることが基本。国家が決めるものではない。国は支援体制であり、子ども世代に夢や希望を与える「未来への投資」であり、就労、結婚、妊娠、出産、育児、居住、学習等の環境整備を図るものだ。

ここには新しい保険制度に対する批判が出る。「6.8兆円の国民負担増」「子ども保険料は43000円、企業負担増2.4兆円」などだ。予算とともに「国が個人の妊娠や出産に介入するのは反対」との声も出る。

要は、人口減少を止めることの重要性・切迫性を国民全体がどう考えるか、ということになる。この問題の最大の問題はそこにある。本書では、衆議院内閣委員会での総理への質問という形で、ここが展開される。こういう良い質疑が行われればどんなにいいか、と思うが、やり遂げなくてはならない最重要テーマである事は間違いない。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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