評判を呼んだ連作短編集「本と鍵の季節」に出てきた高校で図書委員をつとめる堀川次郎と松倉詩門のコンビが再び登場する青春ミステリー。今度は長編。ごく普通の高校生活の中で出てきた事件を、友情も絡めて丁寧に解き明かしていく。
ある日、図書館の返却された本の中に、猛毒のトリカブトの花の栞を見つける。そして写真コンテストで金賞を撮った写真が保健室の隣に掲示され、その写真モデルはなんとトリカブト持ってジャンプしているものだった。撮影・岡地恵、モデル・和泉乃々花とあり、共に同じ高校に通う生徒だった。堀川と松倉のニ人は、校舎の裏でトリカブトが栽培されているのを見つける。また、瀬野麗が、校舎裏の花壇からトリカブトを抜いて埋める姿を目にする。そしてついに、嫌われていた教師が中毒で救急搬送されてしまう事態が生じ、学校内に不安が広がっていく。堀川と松倉に瀬野が加わり、真相を追っていく。「なぜ猛毒のトリカブトの花が栞に?」・・・・・・。緻密な謎解きが展開される。「わたしたちには人を殺せる"切り札"が必要だった」と言うのだが・・・・・・。
連続殺人事件があるわけでもない。血の臭いもなく淡い日常が続くが、その中に謎や不安の出来事があり、それぞれの人が、全部を晒すわけでもなく、半分は隠し、少しは「嘘」を交えて生きていく。そんなデリケートな「間合い」が、絶妙なタッチで描かれていく。