hisen.jpg「ウクライナ戦争以後の日本の戦略」が副題。「戦争への備えで一番重要な事は、国民が被害に耐え、戦う意欲を持続することです。ところが日本の防衛論議は『相手をやっつける能力』にだけ特化しているようです。国土を戦場にするという状況下で、国民の命を守りきる事は不可能です。ここでも政治は、一番大事な論点を避けているとしか言えません」「(ウクライナを見ても)国防の本質は、『国民の命を守る』ことではなく、『国民が命がけで国を守る』ことだと気付かされました」「(ウクライナと台湾)戦争の動機の面でいえば、対立の焦点は、台湾の独立を容認するかどうかの一点です。中国が武力を使ってもこれを阻止したいのに対し、アメリカが武力を使ってでも台湾を防衛するという対立です。一方、台湾自身は、中国と一つになりたくはないが、戦争してまで強引に独立しようとは思っていません。そうであるなら、米・中・台三者の思惑は、そんなに大きく違っているわけでもない」「私は、ウクライナの戦い方というのは、専守防衛だと思います。ロシアの国内を攻撃するなんてことを宣言してしまったら、それこそ滅ぼされる口実を与えるようなもの。それでも攻めてくるような敵があれば、国民が武器を持ったり、戦車の前に命を投げ出したりして止める。国を守るってああいうことなんじゃないのかというお手本を見ているような感じがする」「国連総会の役割は大事」などと柳沢さんは言う。

「日本では国際人道法の教育が遅れている。一度戦端が開かれたら、その瞬間から交戦法規、国際人道法の世界に入る。開戦法規での違法性は交戦法規ヘ引きずられない。被侵略者だからといって免責される戦争犯罪は存在しない」「武器を取らないからこそ、無辜の一般市民は、国際人道法が保護する対象になるのです。一般市民を武装させてはいけない」「戦争の際に国民は何に参加するかを明確にしておくことの必要性。戦争とは限らずに、日本の場合は総動員法のようなものを作るべきだと思っている」と伊勢崎さんは言う。加藤さんは「ロシアは47カ国を『非友好国』として指定。それ以外の国の方が多いが、その47カ国のGDPの合計は世界のおおよそ7割、残りは中国が15%、ロシアが2%。経済制裁で、さすがの中国もこれを無視してロシアにつくという選択肢はないと思う」「国際政治学はすべてご破算になった。NPT体制と国連の機能不全。もう一度、国際政治のルールを立て直す必要がある」「ロシアの行動は満州事変の日本によく似ていると感じる。満州事変は日本の国際連盟、つまり法による支配への挑戦です」などと述べる。

林さんは、「プーチンの戦争と戦後処理ないし秩序の回復」について述べ、「主権や領域、国益の拡張のため戦争に勝利して敗戦国を支配下に置く戦争とは異質。味方にならないならば力ずくで『我の意思を相手に強制する一方的に仕掛けた戦争』であり、傭兵を使って難癖をつけて情け容赦のない暴力国家そのものの行為に走っている」「プーチンの戦争の戦後処理、秩序回復は、現在進行中の停戦協議すらうまくいかないウクライナ、ロシアに負わせるのは至難。世界の多数国が参集して、新たな『戦時法と戦争責任の在り方』を問う機会が今です。機能しない国連の在り方を問う機会もできるはず。日本の出番はここにある」「ウクライナの生き様に共感が広がっているが、日本では、自衛隊だけではなくて、国民皆が覚悟できるかという部分には難しい問題がある」などと言う。

最後に「停戦しても戦争の火種は残る」「特に戦争犯罪への対処が問題となる」「多分傷はずっと残っていく。おそらく一世紀単位で。ウクライナも復興は簡単ではなく、ヨーロッパは相当荒れる。ロシアの経済力も回復不能、大国の座から落ちるだろう」と、停戦協議の行方と日本の役割について議論している。4人の意見は全く同じわけではないが、ぶつかり、かつ共鳴し、日本のあり方を考えさせる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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