ペインティング・ナイフをすべらせて描いた一枚の「エスキース」(下絵)が紡ぐ連作短編集。
メルボルンに留学した茜は、蒼と出会い恋に落ちる。レッドとブルー。レイとブー。日本に帰るレイを心に留めようとして、ブーは友人の画家・ジャック・ジャクソンに胸から上の人物画を書いて欲しいと頼む。「赤いブラウスと青い鳥のブローチ」「すっと流れるレイの長い髪の毛」――この絵はジャック・ジャクソンにとっても個性を見出し「画家志望ではなく画家のジャック・ジャクソンにしてくれた絵」となった。
メルボルンから帰国するまでの「期間限定の恋」に始まった2人の愛は、日本での展開となる。画廊、絵を飾る額縁工房の物語、漫画家2人の話、輸入雑貨店の店員、猫をめぐっての復縁・・・・・・。様々な困難が当然のように押し寄せるが、収まるところに収まるのは、最初の恋の熱源の大きさあってのことと言えようか。表紙に描かれた爽やかさと美しさが、伝わってくる。