kiminokuizu.jpg面白い。全ての人が一気読みだろう。テレビを席巻するクイズ番組全盛の時代。物知り有名人の競い合いや、東大王に選ばれた者の驚嘆すべき知識量の裏に何があるのか――。引き込まれていく。

優勝すれば1,000万円というクイズ番組「Q1グランプリ」の決勝に進出した三島玲央の対戦相手となったのは、東大医学部4年、圧倒的な知識量、データベースから正確な答えを出してくる知的な超人・本庄絆だった。互いが応酬するなか最後の問題、本庄絆はまだ一文字も問題が読まれないうちにボタンを押して正解、優勝をかっさらう。何が起きたのか。「なぜ本庄絆はQ1グランプリの最終問題において、一文字も読まれていないクイズに正当できたのか?」――。三島は彼について徹底的に調べあげ、真相の解明に乗り出す。

クイズプレイヤーは、知識量だけで勝負するのではないという。「早押しボタンを押した瞬間、クイズプレイヤーはまだ正解にたどりついていない。『わかりそう』という直感だけが心の中にある。必死に頭を回転させ答えを探し回って回答する」という。圧倒的な知識量だけではクイズプレイヤーとしては失格だ。どこで早押しボタンを押すか。「クイズプレイヤーの基本的な戦術は、『確定ポイント』でボタンを押して正答を口にする」「問題が読まれるうちに、膨大な知識量から生まれる選択肢が絞り込まれ、これだという確定ポイントの瞬間にボタンを押す」「加えて『読ませ押し』を使う。主催者が問題文を読むのを中断するまでのわずかな時間を使った技術だ。まだ答えが分からない状態でボタンを押し、その後に主催者が勢い余って発音してしまう声を聞いて答えを確定させる」という。0,何秒の間に出題者のかすかな口の動き、息遣いを察知して回答するというのだから凄まじい。「『クイズの強さ』とは、様々な数列の可能性を見つけられる知識と、リスクを計算しながらベストのタイミングで押す技量と、計算の速さと正確さ、それらの総合値だ」と言うのだ。

「やらせなのかどうか」「なぜ1文字も問題が読まれないうちにボタンが押され正答できたのか」――。三島は本庄絆だけでなく、出題者側、総合演出の坂田泰彦をも徹底調査する。

「人生はクイズだ」――。確かに人生は選択と決断の連続であり、しかも世の中のほとんどのクイズには答えがない。そして、クイズプレイヤーにも、「クイズとは何か」の思考と人生観の差異があることを暴き出す。とにかく面白い小説。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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