神の手をもつ福島孝徳さん。24時間患者さんのために闘い続ける世界一の脳外科医。すごいの一語に尽きる。世界を飛び回り、脳の鍵穴手術を年間600件。この本が出たのは十数年前、その時読んで読書録をそのままにしてきたが、今年の2月に、フジテレビの「アンビリバボー」に紹介されていて驚いた。80歳になった福島さんは、実に全く同じ1年に600件の手術を世界を飛び回って行っているというのだ。志も変わらない。患者さんを救う気迫も変わらない。超難手術に挑み続ける姿勢も変わらない。革新的な手術方法の開発もやり続ける。しかも1人の手術を終えるたびに、1ページの反省点を書いているというのだ。技術だけでなく全人格にわたるスーパードクターだ。
本書では、「脳外科は学問や研究ではなく、目の前の患者さんを救うことです。全力を尽くして患者さんを助けるのが、私の人生であり、ミッション(使命)です」「モットーは、手術一発全治」「私の手術は、赤血球の出ない手術。それぐらいクリーンです」「進歩は現状を否定することから始まる。現状に満足するのではなく、常にもっといい方法がないかを考える」と言う。
そして「すべては患者さんのために」「患者さんに感謝される医者になりなさい。患者さんに尽くしなさい」「患者さんからの感謝の声が、私のエネルギー、原動力」と言っている。
難しい鍵穴手術――とにかく速い、動きがなめらかでムダがない。そして美しい――それは、確実な基礎と膨大な経験の蓄積による。
手術して感謝された米大富豪から得た2億円を、ポンと若手養成の基金に。
医療最前線が戦場なら、大学医学部はペンタゴン。作戦本部の安全な場所にいたのでは、本物の戦いはできないという。現場で体で覚えるしかないわけだ。そして医療費、施設をと政治に叫ぶ。受け止めたい。